定期報告調査・検査を行った際、よくある指摘事項をご紹介します。
今回は特定建築物の定期報告調査時に多かった事例になります。
建物の安全性と機能性を維持するためには、定期的な調査と報告が不可欠です。
特に特定建築物の定期報告は、建物の所有者や管理者にとって重要な義務であり、建物を長期にわたって健康で安全に保つための鍵となります。
しかし、この定期報告でよく指摘される事項があります。これらを理解し、事前に対策を講じることで、建物の安全性を高め、より良い環境を提供することができます。
目次
・避難経路の確保
・排煙オペレーターの作動ボタン
・非常用の照明装置
・外壁の爆裂
避難経路の確保
災害等が発生した際に建物から外へ避難するための経路が確保されていない場合、避難の遅れが生じる可能性があります。
避難経路が確保されていない典型的な例(避難階段や廊下、バックヤードで見られることが多い)
維持管理上のポイント:
・床面にテープや着色等で避難経路の位置と幅を示し、職員に認識させることで、経路上に
段ボール箱のような物品等が置かれるのを防ぎ、避難経路の確保を促します。
排煙オペレーターの作動ボタン
火災時に煙を外に排出するための排煙口を開けるボタンです。このボタンが物品等の障害より押せない場合、避難前に建物内が煙で充満するリスクがあります。
排煙オペレーター(壁埋込型)の例:
物品棚が排煙オペレーターの前に置かれており、ボタンが押せない状況。
壁埋込型排煙オペレーターの場合、前面に棚等を置かないよう、オペレーター周辺をテープで囲むことが効果的です。
吊り下げ式排煙オペレーターの操作:
操作が吊り下げ式(チェーン等)の場合、チェーンが棚等の後ろに隠れて操作できなくなることがあります。
チェーンが隠れないよう注意してください。
維持管理上のポイント:
・職員に排煙オペレーターの位置や役割を周知し、迅速に操作できるようにする。
・吊り下げ式の場合はチェーン等が操作可能な状態に保つ。
・排煙オペレーターの前に物品を置かないようにし、床には物品を置いてはいけない部分にマーキングをする。 ・排煙口を塞ぐような掲示物等を設けないよう職員に周知する。
非常用の照明装置
停電時に避難経路を照らし、避難を助ける照明器具です。
非常用照明装置が点灯しない場合、非常時の停電時に避難経路が分からず、遅れが生じる可能性があります。
非常用照明装置の点灯確認方法:
紐を引くことや、LEDタイプは照明器具についているボタンで点灯確認ができます。
維持管理上のポイント:
・非常用照明装置の充電状態を確認し、充電されていない場合は電気業者に相談する(少なくとも年に1回)。
・非常用照明装置が改修等で撤去されていないか確認し、撤去されている場合は再設置を行う。
・紐が付いている照明器具の場合は、非常用照明装置なので撤去しないようにする。
外壁の爆裂
鉄筋コンクリート造の建物は、外壁面にクラックが入り、そこから鉄筋まで雨水が侵入しサビが発生。
サビは鉄部を膨張させて、コンクリートを剥離させ、鉄筋が露出するのが爆裂です。
維持管理上のポイント:
・定期的に建物の点検を行い、必要に応じて補修をする。
・クラック箇所は軽微なものであっても、経過観察を行い、クラックゲージやクラックスケールで劣化進行していないか確認をする。
・クラックから錆汁が出ていないか確認をする。
定期報告 特定建築物のよくある指摘事項【まとめ】
今回は定期報告調査における、建物の避難経路にかかわるものと、建物の外壁に関して実際に調査した際の写真を併せてご紹介しました。
いずれも不特定多数の人が使われる建物で、これらの指摘事項を残したままにしておくと、非常時などに人命に関わる事故に発展する可能性があります。
建物の管理者様は、是非安全な状態を保てるよう、定期報告を欠かさずに維持管理に努めていただきたいと思います。