定期報告特定建築物調査で問い合わせが多いものの中に外壁の全面打診調査があります。
全面打診調査は10年以上ごとに外壁の
タイル貼(湿式工法)、石貼(湿式工法)またはモルタルの塗り壁の浮き等の劣化がないかを全面確認します。
今回は特定建築物定期報告調査における全面打診調査の詳細をお伝えします。
目次
・まとめ
打診調査の目的
外壁の仕上げ材の仕様が湿式工法のタイル(PC、ALC板に貼られているもの、工場で打ち込まれているものを含む)、石貼またはモルタルの塗り壁の場合、劣化して剥離し、落下する可能性があります。
最悪の場合、落下によって歩行者などに危害を加える恐れがあるため、これらの仕様の外壁については特定建築物調査で打診調査を行います。
全面打診調査は、通常の特定建築物定期報告調査では手の届く範囲で行います。【落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分】
特定建築物定期報告調査はエリアによって、調査サイクルが違いますので1年~3年ごとに行うことになります。
神奈川県での外壁調査の写真。
打診棒でタイル面を叩いて打診音で異
常がないか確認。
先端部分のタイルが浮いていました。
全面打診の調査タイミングは?
全面打診の調査は10年ごとに行うことがなりますが、厳密には下記のようなサイクルになります。
1回目
竣工年の翌年度から起算して10年目に行う。
例
竣工:2011年9月⇒2012年4月からを起算
調査:2022年4月~2023年3月になります。
2回目以降
前回調査した年度の翌年から起算して10年目に行う
例
前回:2022年10月
次回:2033年4月~2023年3月になります。
ただし、竣工後20年以上が経過すると、一度は大規模修繕などの外壁改修を行うことが一般的です。
では、全面打診のサイクルの途中で外壁改修を行った場合はどうなるでしょうか?
この場合、外壁改修を行った年度を起点として10年後に全面打診を行うことになります。
全面打診の調査範囲は?
建物の壁の仕上りから、その建物の壁の高さの1/2の距離の水平面に公道、不特定または多数の人が通行する私道、構内通路、広場を有する壁面を調査します。
ただし、壁面直下に鉄筋コンクリート造、鉄骨造等の強固な落下物を防御する施設(屋根、ひさし等)が設置され、または植込み等により、影響する角度内に完全に遮られ、災害の危険が無いと判断される部分、また植え込み等歩行者等が通行しない箇所を除きます。
したがって、場所によっては打診調査が不要な壁面もあります。
全面打診の調査方法
全面打診の調査方法は、テストハンマー、打診棒、赤外線調査によるものがあります。
テストハンマーと打診棒は直接外壁を叩いて外壁劣化を確認する方法です。
高い建物に全面打診を行う場合は、足場を組んで調査をするか、ロープまたはゴンドラを吊るして屋上から調査をする必要があります。
赤外線調査は赤外線サーモグラフィでタイル等の浮きを確認します。
異常のある箇所は健全な壁面と温度差があるので、サーモグラフィで可視化して外壁状況を確認することができます。
赤外線調査では地上から照射する場合と建物の高さがある場合は、照射距離が長いのでドローンを使う場合があります。
調査手法によるメリット・デメリット
テストハンマー、打診棒での調査
メリットは、直接壁仕上げの状況を確認することができるので、正確な調査ができることです。
また、是正箇所があった場合に足場があれば、状況によりますがそのまま補修工事も可能なので是正報告がしやすいことがあります。
デメリットは、足場を建てて行う場合は調査よりも設置期間が長く、足場設置費のコストが高くつくことです。
そのため、足場設置をせずにゴンドラやロープで調査員が屋上から吊り下がって調査をする方法があります。
建物の形状や立地条件にもよりますが、足場を設置する方法よりローコストです。
赤外線の調査
メリットは、短時間に大きな面積を調査できるのでコスト面が有利です。
デメリットは、壁仕上げの温度差での解析調査精度が調査員の経験や技術に左右され、安定した調査結果が得られないことがあります。
また、建物の立地条件にも左右されることや、仕上げ材や下地の状況の違いによりサーモグラフィの温度差が出てしまい、是正箇所の判断が難しいがでることがあります。
また、是正箇所が発生した場合は、別途工事が必要なのでその場合は改めて足場設置が必要になることにもなります。
今回のまとめ
全面打診調査は10年を超えたタイミングで実施するため、報告頻度は少ないですが、該当する時期になるとどのように対応すればよいか悩むことがあるかもしれません。
建築メンテナンスを含めて全面打診調査を考えたとき、調査を適切に行える業者をパートナーに選んでいただくことが大切なことだと思います。
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