こども園・保育園・幼稚園|働きやすさを支える職員用空間の設計
- estyleishii
- 2024年3月16日
- 読了時間: 5分
更新日:9 時間前

少子高齢化が進む2026年、認定こども園・保育園・幼稚園の運営において最大の課題は「人材の確保と定着」です。どれほど素晴らしい教育理念を掲げても、それを体現する職員(保育士・教諭)が疲弊していては、質の高い保育は提供できません。
かつての園舎設計は、子どもたちの安全や楽しさが最優先され、職員用スペースは「余った場所に配置する」という傾向がありました。しかし、今や現場に求められるのは、職員の心身の負担を軽減し、自己肯定感を高める「働く場としての園舎設計」です。本コラムでは、採用力を高め、離職率を下げるための職員用空間設計のポイントを深掘りします。
目次
心理的負担をリセットする「オフ」の空間設計
保育の現場は常に子どもたちの安全に気を配り、瞬時の判断が求められる緊張感の高い職場です。この緊張状態を一時的に解く「完全なオフ」の空間があるかどうかが、精神的な疲労蓄積を防ぐ鍵となります。
① 「子どもと視線が合わない」休憩室の重要性
保育園・こども園の設計において、休憩室は単に机と椅子があるだけの場所であってはなりません。
物理的な遮断: 子どもたちの声や視線から完全に解放される場所、理想的には「スタッフルーム(職員室)」とは別の階や、奥まった静かな場所に配置することが望ましいです。
アメニティの充実: カフェのような落ち着いた照明、座り心地の良いソファ、リラックスできる音楽やアロマを取り入れた「リチャージ(再充電)空間」としての設計が、職員の心理的満足度を飛躍的に高めます。
② セルフケアを支える洗面・トイレ空間
園舎の設計事務所として私たちが特に提案するのは、職員専用の洗面・トイレの質質です。
ホテルライクなパウダールーム: 忙しい業務の合間にふと鏡を見たとき、清潔で美しい空間であれば、気持ちが整います。個別の更衣ロッカーや、身だしなみを整えやすい大きな鏡、十分な収納を備えることが、プロとしての意識と自信を支えます。
肉体的な疲労を最小限に抑える「科学的動線」
保育は非常に体力を使う仕事です。園舎の設計によって移動距離や無駄な動きを数パーセント削減するだけで、年間の肉体的負担は劇的に変わります。
① ゾーニングによる「歩数」の削減
職員室とエントランスの近接化: 保護者対応や来客対応のたびに長い廊下を往復するのは大きな負担です。
職員室をエントランス横に配置し、事務作業をしながらでも来客を感知できる設計は、現代の園舎設計のスタンダードです。
ストック収納の分散配置: 消耗品やおむつ、画材などの備品を「一箇所」にまとめるのではなく、各教室の近くに分散して収納できるよう設計します。
「取りに行く」という動作を減らすことが、肉体疲労の軽減に直結します。
② 身体への負担を考慮した設備選定
床材のクッション性: 長時間立ち仕事や膝をつく動作が多い保育士のために、衝撃吸収性の高い床材を選定します。
これは子どもたちの安全だけでなく、職員の腰痛や膝痛の防止にも寄与します。
業務効率を最大化する「オフィス環境」の構築
残業時間の削減は、働き方改革の要です。認定こども園・保育園・幼稚園の設計において、事務作業がいかにスムーズに進む環境をつくるかが問われています。
① 集中と共有を両立するワークスペース
コワーキングスタイルの導入: 全員が固定の机に座るのではなく、集中して書類を作成できる個別ブース(集中コーナー)と、行事の打ち合わせを円滑に行えるミーティングテーブルを分ける設計が効果的です。
ICT環境の整備: 各所にコンセントやWi-Fi、USBポートを配置。タブレットやノートPCを持ち運んで、隙間時間にその場で記録業務ができる環境を整えることで、「事務作業のために職員室に戻る」手間を省きます。
② 保護者相談の質を高める個室設計
プライバシーを確保した相談室: デリケートな相談を受ける際、周囲を気にせず話せる個室は、職員にとっても心理的安心感に繋がります。これは「プロとしての支援」を提供するための大切なツールです。

チームワークを醸成するコミュニケーション設計
良い保育は、職員同士の信頼関係から生まれます。私たち設計事務所ができることは、自然な会話が生まれる「仕掛け」を作ることです。
① マグネットスペースの活用
給湯コーナーの充実: コーヒーを淹れる、お弁当を温めるといった日常の動作が行われる場所に、少し広めのカウンターやスタンディングデスクを設けます。ここで生まれる「雑談」が、実は最も重要な情報共有やストレス解消の場となります。
視認性の高いホワイトボード壁: 職員室の壁一面をホワイトボードにし、行事のアイデアや称賛のメッセージを自由に書き込めるようにします。アナログなコミュニケーションを設計に取り入れることで、チームの一体感を醸成します。
採用力を高める「見学」を意識した職員空間
就職活動中の学生や転職を考える保育士が園を見学する際、彼らが最もチェックしているのは「自分がここで働くイメージ」です。
「ここで働きたい」と思わせる意匠性: 職員室や休憩室が片付いており、おしゃれで快適な空間であれば、「この園は職員を大切にしている」というメッセージがダイレクトに伝わります。園舎の設計事務所として、私たちは「職員用玄関」や「更衣室」のデザインにも一切妥協しません。

こども園・保育園・幼稚園|働きやすさを支える職員用空間の設計【まとめ】
職員専用空間の設計は、単なる「働きやすさ」を超えて、子どもたちの成長を支える大切な基盤です。
休憩や業務効率化、安心できる収納やプライバシー、そして園全体のチームワークを育む場でもあります。
その一つひとつが積み重なって、職員の笑顔を生み出します。
そして、その笑顔こそが、子どもたちにとって最高の学びと安心を届ける力になるはずです。


