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なぜ新築施設にカビが?定期報告で見直す建築士の画期的カビ対策

  • 執筆者の写真: estyleishii
    estyleishii
  • 54 分前
  • 読了時間: 10分
天井面のカビの状況

実は築浅の最新施設ほど、風が通りにくく湿気がこもりやすいという「築浅建物ならではの理由」から深刻なカビが発生しがちです。


除湿機だけでは防ぎきれないカビ被害に対し、本記事では定期報告調査の現場で見えてきた根本原因を解説。

一級建築士の視点から、清掃や既存設備だけに頼らない画期的なカビ対策をご紹介します。

目次

・なぜ?「新しい施設」ほどカビが発生しやすい3つの理由

・従来のカビ対策がうまくいかない理由

・建築・技術の視点から見る「画期的なカビ対策」4選

・施設管理者が今すぐ実践できるステップ



なぜ?「新しい施設」ほどカビが発生しやすい3つの理由


「古くて風通しの悪い建物ならまだしも、なぜ築浅の施設で?」と疑問に思う方も多いでしょう。最新の建築技術で建てられた施設にカビが発生しやすい背景には、現代の建物だからこその3つの大きな理由が存在します。

 

① 建物全体の「気密性」が劇的に高まっている

現代の建築物は、省エネルギー性能の向上や断熱性の確保を目的として、非常に隙間の少ない「高気密」な構造で作られています。

高気密な空間は、冷暖房の効率が良く、外気の温度影響を受けにくいという大きなメリットがあります。

 

しかしその反面、「一度建物の中に入った湿気が外に逃げにくい」という性質を持っています。

昔の建物は適度に「隙間風」があったため、意識しなくても自然と湿気が排出されていました。しかし高気密な現代建築では、意図的かつ計画的に換気をコントロールしなければ、室内の湿気がどんどん溜まってしまうのです。

 

② コンクリートや建材からの「初期放散水分」

これが築浅施設におけるカビの最大の盲点です。

鉄筋コンクリート(RC)造の建物や、基礎・床にコンクリートを使用している施設では、施工後およそ2〜3年の間、コンクリート内部に含まれる多量の水分が少しずつ室内へと放出され続けます。

これを「初期放散水分(しょきほうさんすいぶん)」と呼びます。

 

新築から数年間は、どれだけ外が乾燥していても、建物自体が常に水分を供給し続けている状態にあります。

見た目は乾燥して完成しているように見えても、壁の奥や床下からは絶えず湿気が吐き出されているため、想定以上の高湿度環境が作られてしまうのです。

 

③ 現代的な「空調優先設計」による空気の滞留(デッドスペース)

大型の施設では、デザイン性や空間の効率利用のために、天井がすっきりしたデザインになっていたり、細かく部屋が仕切られていたりします。

しかし、エアコンの風が届く範囲には偏りがあります。エアコンの風が直接当たる場所は乾燥していても、部屋の隅、家具や什器の裏側、天井付近のコーナーなどには、「まったく空気の流れがない場所(デッドスペース)」が必ず発生します。

 

カビの胞子は、「湿度が一定以上あり、風がない静かな場所」を最も好みます。部屋中央の湿気は除湿機で取れていても、空気が滞留している部屋の隅では局所的に湿度が80%を超え、カビが爆発的に繁殖してしまうのです。



従来のカビ対策がうまくいかない理由


カビを発見した際、多くの施設管理者がまず行うのが「エアコンの除湿モードを強める」「業務用の除湿機を導入する」という対策です。もちろんこれらも無意味ではありませんが、それだけでは解決しないケースが多々あります。

 

エアコンの除湿(ドライ)機能の限界

一般的なエアコンの除湿機能は、部屋全体の温度や「平均的な湿度」を感知して作動します。

しかし、エアコンが「部屋の湿度は60%に保たれている」と判断して運転を緩めたとしても、空気の流れがない部屋の隅や、冷たい外気に接している壁際の湿度(局所湿度)は80%を超えているということが頻繁に起こります。

 

エアコンは空間全体の平均値をコントロールすることは得意ですが、壁際や局所的な湿気までを制御することは難しいのです。

 

業務用除湿機の「届かない風」

「エアコンでダメなら」と業務用の大型除湿機を導入する施設も増えています。

実際、強力な除湿機を稼働させれば、タンクには毎日大量の水が溜まります。


しかし、どれだけ強力な除湿機であっても、そこから離れたデッドスペースの湿気を吸い寄せる力には限界があります。

除湿機の周辺だけが乾燥し、カビが発生している壁際や天井付近には乾いた風が届いていないという「効果の偏り」が生じてしまうのです。



建築・技術の視点から見る「画期的なカビ対策」4選


では、既存の空調や除湿機だけに頼らず、根本からカビを防ぐためにはどのような方法があるのでしょうか。

ここでは、近年の建築設備や最新技術を活用した、画期的かつ効果的なカビ対策のアプローチを4つご紹介します。

 

① 「相対湿度」ではなく「露点温度」制御(空調の賢い運用)


私たちが日頃目にする「湿度○○%」という数値は「相対湿度」と呼ばれます。

しかし、カビの発生や結露に直接関係しているのは、空気中の水分が水滴に変わる境界線である「露点温度(ろてんんど)」です。

どれだけ部屋全体の湿度が低く見えても、壁や天井の表面温度が下がり、その付近の空気が露点温度に達すると、目に見えないレベルの微細な結露(微細結露)が発生します。

カビはこの微細結露を水分補給源にして発芽します。

 

画期的な手法:部屋の中央ではなく、カビが生えやすい壁際や天井付近にセンサーを配置し、「表面温度」と「露点温度」の差をリアルタイムで監視します。

壁面が結露しそうになったタイミングで、ピンポイントでサーキュレーターを稼働させたり、微弱な暖風を送ったりして表面温度を上げます。

 

メリット:空間全体の空気を無理に乾燥させる必要がないため、電気代を抑えつつ、カビが最も発生しやすい「壁面の結露」を確実に防ぐことができます。

 


② 湿度スイングと「微流風」の創出(デッドスペースの破壊)


カビの胞子は、風速のない停滞した空気の膜(境界層)に守られることで、壁や天井に付着して根を張っていきます。

逆に言えば、人間が風として感じないほどの「わずかな空気の流れ」があるだけでも、カビは付着・生育できなくなります。

 

画期的な手法:静音性・省エネ性に優れた「DCモーター搭載のサーキュレーターや小型ファン」などを天井裏や部屋の四隅に分散設置します。そして、風速0.1〜0.3m/s程度の「微流な風」を常時作り出します。

 

メリット:エアコンのように「肌に風が当たって寒い・不快」と感じることが一切ないレベルの微風でありながら、部屋全体の空気の停滞を解消します。

除湿機と組み合わせることで、乾いた空気を部屋の隅々まで届け、カビ胞子の生着率を劇的に下げることができます。

 

③ 可視光応答型光触媒のコーティング


可視光応答型「酸化チタン+銀系」光触媒コーティング 壁紙や天井材、エアコンの吹き出し口などに、あらかじめカビを分解する特殊なコーティングを施しておく方法です。

従来の光触媒は、太陽光に含まれる「紫外線」が当たらないと効果を発揮しませんでした。そのため、日当たりの悪い部屋や室内灯メインの施設では効果が限定的でした。

しかし、近年の技術革新により開発された「可視光応答型光触媒」は、室内で一般的に使われているLED照明の光でも強力に反応します。

 

仕組み:

光触媒の成分(酸化チタンや銀など)が室内光を受けると、表面に強い酸化力(活性酸素)が発生します。

ここに空気中を漂うカビの胞子や細菌、ニオイの元が接触すると一瞬で分子レベルに分解されます。

 

メリット:

一度壁や天井にスプレー・施工しておけば、数年間にわたって効果が持続します。

日常的な清掃の手間を増やさずに、24時間体制で自動的にカビ胞子を退治し続けることが可能です。

「暗所でも機能する無光触媒(リン酸チタン系)」と組み合わせれば、夜間の消灯時でもカビ菌の増殖を抑えられます。

 

④ 調湿建材(調湿バリア)への張り替え・施工


建物の「壁や天井の素材」そのものを、湿気を吸放湿できる高機能建材に変えるアプローチです。

 

仕組み:

エコカラット、珪藻土、漆喰、あるいは高機能な調湿石膏ボードといった素材は、ミクロの小さな穴を無数に持っています。

室内の湿度が上がると自動的に水分を吸収し、乾燥すると蓄えた水分を放出する「自律的な湿度調整」を行います。

 

効果:

カビが発生・繁殖するするためには、「湿度が70%〜80%以上の状態が数十時間〜数日間続く」ことが必要条件となります。

調湿建材を導入することで、一時的な湿度の急上昇を吸収してカットし、カビが発生・繁殖する時間的猶予を与えない環境を構造的に作り出すことができます。



施設管理者が今すぐ実践できるステップ


施設管理者が今すぐ実践できるステップとして、大がかりな工事や設備の刷新をすぐに行うのが難しい場合でも、日々の運用や見直しによってカビのリスクを大幅に減らすことができます。


ステップ1


放射温度計やサーモグラフィーで「カビの現場」を可視化する まずは、目に見える温湿度計の数値だけに頼るのをやめましょう。

量販店やホームセンターでも手に入る「非接触型放射温度計」や、簡易的な「サーモグラフィーカメラ」を使い、カビが生えている壁の表面温度や、部屋の隅の温度を測定してみてください。

 

「部屋の中央は25℃・湿度60%なのに、カビが生えている壁際だけは19℃まで冷え込んでいる」といった現象が視覚的に把握できるようになります。

温度が低い場所こそが、結露を起こしているカビの発生源です。


ステップ2


除湿機+サーキュレーターの「セット運用」 業務用の除湿機を置いている場合は、単体で稼働させるのではなく、必ず「小型サーキュレーター」をセットで設置してください。

除湿機の吹き出し口から出る「乾いた風」をサーキュレーターに向け、その風を部屋の隅やカビが発生しやすいデッドスペースに向けて強制的に送り出します。

空気の循環を作るだけで、同じ除湿機を使っていてもカビの抑制効果は格段に跳ね上がります。


ステップ3

定期報告調査の機会を「建物診断」に活用する。

建物の維持管理においては、法律で定められた「特定建築物等の定期調査(定期報告)」が行われます。

これは単に違反がないかを調べるだけでなく、建物の健康状態をチェックする絶好の機会です。

定期報告調査の際に、調査員や専門家に「実はこの部屋のこの部分にカビが生えやすくて困っている」と相談してみることをおすすめします。

建築や設備の専門的な知識を持ったプロであれば、単なる清掃方法ではなく、「換気設備の容量不足」「断熱材の途切れ(熱橋・ヒートブリッジ)」「排気ルートの不備」といった、建築構造上の根本原因を指摘し、適切な改善策をご提案することができます。



壁面のカビの状況

まとめ


カビ対策は「清掃」から「建築・環境の制御」へ 築浅の施設で発生するカビは、決して「掃除の手抜き」や「不衛生」だけが原因ではありません。

高気密化された現代建築の構造、コンクリートからの初期放散水分、そして空気の滞留といった複数の要因が重なり合って引き起こされる「建築的・環境的な問題」です。


そのため、発生したカビを拭き取るだけの「イタチごっこ」から抜け出すためには、以下のような視点の転換が必要です。

 

・露点温度と壁面温度を意識したピンポイントの結露防止。「微流風を活用した空気の停滞の解消」

・LED光でも反応する「最新光触媒コーティングの活用」

・建材による「構造的な吸放湿コントロール」


新しく綺麗な施設だからこそ、その快適性と安全性を長く保ちたいもの。

「除湿機を回しているのにカビが消えない」とお悩みの施設管理者様は、ぜひ一度、空気の流れや壁面の温度といった「建物の環境」に目を向け、専門家とともに根本的な解決策を取り入れてみてはいかがでしょうか。



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