こども園・保育園・幼稚園の設計で見落としがちなこと5つの重要視点
- estyleishii
- 2024年2月29日
- 読了時間: 6分
更新日:2 日前

認定こども園や保育園の設計において、子どもたちの安全や豊かな学びに配慮することは大前提です。
しかし、実際の現場では、意匠性(見た目)やコスト管理を優先するあまり、運営開始後に「使いにくい」「思わぬリスクがあった」と発覚するケースが後を絶ちません。
園舎は一度建ててしまうと、数十年間にわたって使い続けるものです。本コラムでは、安全性・利便性・音響・衛生・光環境という、見落としがちながらも園の質を左右する「5つの重要視点」を徹底解説します。
目次
【安全】子ども目線で徹底する「リスクゼロ」の設計
認定こども園・保育園・幼稚園の設計において、安全性の確保は最優先事項です。しかし、一般的な建築基準を満たすだけでは不十分なケースが多々あります。
子どもの予測不能な動きを想定する
手すりと柵の再定義: 手すりの高さは身長に合わせるだけでなく、子どもが足をかけて登ってしまう「横格子」のデザインは厳禁です。
縦格子にする、あるいは隙間を100mm以下にするなど、園舎設計ならではの配慮が求められます。
「角」の処理と床材の選定: 万が一転倒しても大怪我に繋がらないよう、家具や壁の角にR(丸み)をつけることはもちろん、滑りにくさと衝撃吸収性を両立した床材の選定が必須です。
指挟み防止の徹底: 扉の吊元(ヒンジ側)での指挟み事故は非常に多く、ソフトクローズ機能やガードの設置は、設計事務所が必ず提案すべきポイントです。
避難経路の「直感性」
非常時の避難経路は、幼児の身体能力でもスムーズに移動できる必要があります。
段差の解消はもちろん、視覚的に出口が認識しやすい内装計画など、パニック時を想定した園舎の設計が、子どもたちの命を守ります。

【利便性】職員と保護者の負担を減らす「機能美」
利便性の欠如は、日々の業務効率を低下させ、保育士の疲労を蓄積させます。幼児施設は、建物そのものが「働きやすさ」を支援する仕組みを構築しなければなりません。
動線計画の落とし穴
保護者の「滞留」を防ぐ: 朝夕のラッシュ時にエントランスや駐車場や駐輪場が混雑すると、近隣トラブルや事故を招きます。
お迎えの動線と、子どもを預かるスペースの距離感、ベビーカー置き場の配置など、スムーズな流れの動線をデザインします。
収納の「適材適所」: 「収納が足りない」というのは、多くの園から聞かれる悩みです。単に広い倉庫を作るのではなく、各教室で必要なものがその場で取り出せる「分散型収納」を園舎設計に取り入れることで、職員が移動に費やす時間を大幅に削減できます。
柔軟な空間配置
固定的な壁を減らし、将来の定員変更や行事に合わせて空間を仕切れる「可変性」を持たせることで、こども園・保育園・幼稚園の設計はより長命なものとなります。

【音響】理想的な教育環境を作る「音のコントロール」
見落とされがちですが、音響環境は子どもたちの情緒と学びの質に直結します。
「騒がしさ」によるストレスを防ぐ
吸音材の戦略的配置: コンクリートやフローリングが多い現代的な園舎設計では、音が反響しすぎて「常にガヤガヤしている」状態になり、子どもたちが先生の話を聞き取りにくくなります。天井や壁に吸音パネルを配置し、おだやかな音環境を整えることが、集中力の向上に繋がります。
近隣への配慮(遮音): 音楽活動や子どもたちの歓声が近隣トラブルにならないよう、サッシの遮音性能や換気口の配置には細心の注意が必要です。
行事の質を高める
発表会を行うホールでは、マイクに頼らなくても声が自然に届くよう、残響時間を考慮した設計を行います。
天井・壁・床の仕上げを工夫することで、声が前に伸び、言葉や歌がはっきり伝わる音環境を整え、子どもたちの想いがしっかり届く舞台づくりを支えます。

【衛生】健康と信頼を守る「クリーンな環境設計」
集団生活において感染症のリスクは避けて通れません。認定こども園・保育園の設計段階から、衛生管理を自動化・簡略化する工夫を盛り込みます。
感染症に強い園舎づくり
換気と空気の流れ: 機械換気だけでなく、窓を保育室の上層と下層に設け、自然の風が通り抜ける「重力換気」などを考慮した窓の配置。
常に新鮮な空気が循環する園舎設計は、エアコンに頼らない空調とアレルギーや呼吸器疾患の予防にも寄与します。
非接触(タッチレス)の導入: 手洗い器やトイレの自動水栓、自動ドアなどは、今や園舎設計において、感染症を考慮した標準的な検討項目です。
清掃のしやすさ: 巾木(はばき)の形状一つをとっても、埃が溜まりにくいフラットなデザインを採用することや、トイレなどでは、長尺ビニールシートを巾木状に巻上げるなどして、日々のメンテナンスを容易にすることで、時間を短縮し、運営コストの削減に貢献します。

【光】学びと発達を促進する「光環境」のデザイン
空間のデッドスペースを生む「光のムラ」の解消
園舎設計で見落とされがちなのが、室内における「光の偏り」です。
窓際は直射日光で眩しすぎる一方で、部屋の奥は照明が必要なほど暗い ― この極端なコントラストは、子どもたちの活動場所を無意識に限定させてしまいます。
眩しさを避けるために日中もカーテンを閉め切るような環境では、せっかくの開放感が損なわれ、空間を有効に活用できなくなる要因にもなります。
柔らかな光を「奥」まで届ける工夫
そこで有効なのが、直射日光を一度反射させて取り込む手法です。
「ライトシェルフ(採光棚)」の導入:窓の中間に庇(ひさし)を設け、強い光を遮りながら、その反射光を天井に当てて部屋の奥まで優しく届けます。
均一で穏やかな光環境:照明に頼り切るのではなく、部屋全体に均一な自然光を行き渡らせることで、子どもたちはどこにいても遊びに集中でき、色彩を正しく捉えることができます。
活動シーンに合わせた「光の切り替え」
自然光を活かす一方で、最新の園舎では「調光システム」の導入も進んでいます。
静と動のメリハリ:お昼寝の時間は入眠を誘う穏やかな暖色、学びや作業の時間は集中力を高める昼白色など、シーンに合わせて光をコントロールします。環境側から子どもの活動をサポートすることで、園全体の規律と落ち着きが自然と整います。
園舎設計で見落としがちなこと【まとめ】
認定こども園・保育園・幼稚園の設計において、安全性、利便性、音響、衛生、光環境という5つの視点は、一つでも欠けると園の持続可能性を損なう恐れがあります。
私たちは、単にきれいな建物を建てるだけの設計事務所ではありません。運営開始後の日常を緻密に想像し、職員が笑顔で働き、子どもたちが健康に、そして安全に成長できる「未来の舞台」を創り上げます。
細部へのこだわりが、保護者からの高い信頼と、地域で選ばれ続ける園のブランド価値を生み出します。園舎の建て替えや新設をご検討の際は、ぜひ私たちプロの視点を活用してください。

