園舎設計における色彩計画とは?― 木の素材感・色の組み合わせが、子どもの落ち着きと園の印象を左右する
- estyleishii
- 4 日前
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更新日:3 日前

園舎の色を考えるとき、「何色にするか」から検討を始めていませんか。
しかし実際の空間では、同じ色合いであっても、素材や表面の質感、光の受け方によって、見た目の重さや落ち着き感は大きく変わります。
特に園舎は、子どもが長時間を過ごす場所です。色そのものよりも、「どう見えるか」「どの程度刺激になるか」が、日々の過ごしやすさに直結します。
このコラムでは、園舎設計において大切にしたい色彩とテクスチャーの考え方について整理していきます。
目次
園舎の「色」、どこまで考えていますか?
園舎の新築や建替え、改修を考え始めた際、多くの理事長先生・園長先生が最初に気にされるのが「園舎の雰囲気」ではないでしょうか。
・明るく楽しそうな園にしたい
・子どもが落ち着いて過ごせる空間にしたい
・園の方針や考え方が伝わる建物にしたい
その印象を大きく左右するのが「色彩」です。しかし実際の設計では、色だけに注目してしまうと、かえって落ち着かない園舎になってしまうことも少なくありません。
園舎の色彩計画で本当に重要なのは、「何色を使うか」ではなく、素材・質感・光・色の組み合わせをどう整えるかです。

園舎の色彩は「色」だけで決まらない
色彩計画というと「壁はこの色」「床はこの色」と色名を決める作業を想像されがちです。
しかし実際の空間では同じ色名であっても、次の要素によって見え方は大きく変わります。
・素材が違う
・表面の仕上げが違う
・光の当たり方が違う
だけで、印象はまったく異なります。
特に園舎は、子どもが長時間を過ごす場所です。色の「見え方」や「刺激の強さ」は、日常の過ごしやすさや落ち着きに直結します。
そのため園舎の色彩計画では、色・素材・質感・光をセットで考える視点が欠かせません。
色は同じでも、素材が変わると空間の質は変わる
園舎の内装でよく使われる素材に「木」があります。一口に木の内装と言っても、その表情は大きく分かれます。
木の素地の色を生かした内装
・木目や年輪、節など、自然の情報量がある
・光を柔らかく受け止める
・温かみ・安心感・落ち着きを感じやすい
木の素地に茶色いニスなどを塗った板は、単なる「茶色」ではなく、子どもにとって安心できる背景色として機能します。時間の経過とともに風合いが変化する点も、園舎にとっては大きな魅力です。
一方で、木材にペンキで茶色をベタ塗りした場合
・木目などの情報が消え、色の主張が強くなる
・均質ではあるがのっぺりとしている
・使い方によっては重たく、人工的な印象になる
同じ「茶系色」であっても、素材の持つ情報量の違いによって空間の印象を大きく変えることが分かります。
園舎設計において、同系色で比較した場合、テクスチャーの違いで視覚的な重さや落ち着き感が異なってきます
光沢とマットカラーが与える心理的な違い
色彩計画で見落とされがちなのが、「光沢」の有無です。
光沢仕上げ(グロス)
・光を強く反射し、色が鮮やかに見える
・にぎやか・活動的な印象になる
・視覚刺激が強く、長時間では疲れやすい
アクセントとして使う分には効果的ですが、教室や廊下など、長時間過ごす空間では注意が必要です。
マット仕上げ(艶消し)
・光を柔らかく拡散する
・色の主張が穏やかになる
・落ち着き・安心感が生まれやすい
アクセントとして使う分には効果的ですが、教室や廊下など、長時間過ごす空間では注意が必要です。
園舎では、「過ごす空間」ほどマット仕上げが適しているケースが多くなります。
色彩計画は、色名だけでなく、光の反射まで含めて設計する必要があります。

なぜ「色は3色まで」が基本なのか
園舎の色彩について調べると、「色は3色までがよい」と聞いたことがある方も多いかもしれません。
これは単なるデザイン上の慣習ではなく、園舎という空間にとって合理的な理由があります。
子どもは多色空間に疲れやすい
園児は、大人に比べて視覚情報を整理する力が未発達です。多くの色が同時に存在する空間では、
・注意が散りやすくなる
・落ち着きにくくなる
・行動が過剰になる
といった傾向が出やすくなります。
空間の大部分は「背景」である
壁・床・天井は、空間の大半を占めます。ここに多くの色を使ってしまうと、空間が常に主張し続ける状態になります。
園舎では、空間が前に出るのではなく、子どもの活動を支える「背景」であることが重要です。

実務的に安定する色の構成
設計実務では、次のような構成が最も安定します。
・ベースカラー:約70%(壁・天井・床などの基本色)
・サブカラー:約20〜25%(建具・家具・部分壁)
・アクセントカラー:約5〜10%(扉の一部、サイン、ポイント)
これが「3色まで」と言われる、心理的・実務的な根拠です。
なお、遊戯室や制作コーナーなど、活動性を意図的に高めたい場所では例外もあります。大切なのは、どこに・どの範囲で使うかを整理することです。
色の組み合わせは「園の考え方」を映す
色彩計画は、単にきれいに見せるためのものではありません。その園が
・落ち着きを大切にしているのか
・活動性を重視しているのか
・年齢ごとに環境を分けたいのか
といった園の方針や考え方を、空間として表現する手段でもあります。
色を増やすことで表現するのではなく、色数を抑え、素材や光で豊かさをつくる。それが、園舎設計における色彩計画の基本です。
園舎の色彩は「目立たせる」ためのものではない
【まとめ】
園舎の色彩は、写真映えや第一印象のためだけにあるものではありません。
子どもが毎日過ごし、成長の時間を積み重ねていく場所だからこそ
・素材
・色
・光
・組み合わせ
を丁寧に整えることが大切です。
園舎の色彩計画に「正解」はありません。しかし、考え方の軸はあります。
同じ色であっても、素材や仕上げによって印象は大きく変わります。空間全体としてどのような見え方になるのかを整理し、子どもにとって心地よい刺激量を整えていくこと。
それが、園舎設計における色彩計画に求められる視点です。


