失敗しない認定こども園・保育園の設計|「色」と「素材」で差がつく、おしゃれで落ち着きのある園舎デザインの法則
- estyleishii
- 2 日前
- 読了時間: 8分

認定こども園や保育園、幼稚園の建て替え・新築を検討される理事長先生・園長先生にとって、最も頭を悩ませるのが「園舎のデザイン」ではないでしょうか。
「新しい園舎を、地域で一番おしゃれで魅力的な建物にしたい」 「でも、子どもたちが落ち着きをなくすような派手な空間にはしたくない」「保育方針である 【主体性】や【思いやり】を、建物でどう表現すればいいのか?」
実は、こうした悩みはすべて「色彩計画(カラープランニング)」の考え方一つで解決できます。
しかし、多くの園舎設計において、色は「最後のアピール要素」として扱われがちです。
本コラムでは、年間を通じて多くの園舎設計に携わる設計事務所の視点から、子どもの集中力を育み、保護者を惹きつける「おしゃれで機能的な園舎」をつくるための法則を、徹底解説します。
目次
認定こども園・保育園設計で「色彩」が重要な3つの理由
なぜ、園舎設計において「色」がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。
それには、単なる見た目以上の科学的・戦略的な理由があります。
① 子どもの発達段階と視覚刺激の相関
子ども、特に乳幼児の視覚は大人よりも敏感で未発達です。強すぎる色刺激(ビビッドな原色など)が多すぎる空間では、脳が情報の処理を追いつかせることができず、結果として情緒の不安定や多動を引き起こす一因になることが近年の研究で指摘されています。
0〜2歳児には「安心感を与える淡いトーン」、3〜5歳児には「創造性を刺激するアクセント」といった、発達段階に合わせた色の使い分けが求められます。
②「落ち着きのない子」を支える視覚環境づくり
「最近、子どもたちがソワソワしている」と感じる場合、それは園舎の視覚的な「ノイズ」が原因かもしれません。
壁の色、掲示物の背景、床の照り返し。
これらがバラバラだと、子どもはどこに注目していいか分からず、集中力が削がれます。色彩計画を整えることは、特別な支援を必要とする子だけでなく、すべての園児にとっての「環境による合理的配慮」となります。
③ 保護者の安心感と「選ばれる園」としての広報戦略
保護者が園見学に来た際、第一印象を決めるのは「空間の調和」です。おしゃれなデザインは「この園は教育環境に投資している」「細部まで配慮が行き届いている」という信頼感に直結します。
認定こども園への移行や、待機児童解消後の「選ばれる時代」において、意匠性の高い園舎は最強の広報ツールとなります。

園舎デザインの核心:色よりも「テクスチャー(質感)」に注目する
設計事務所として私たちが最も大切にしているのは、実は「色名」よりも「質感」です。
光沢(グロス)のコントロールが「落ち着き」を生む
同じ「白」や「茶色」でも、ツヤツヤした光沢仕上げと、しっとりしたマット(艶消し)仕上げでは、脳に与える刺激が全く異なります。
光沢仕上げ: 光を反射し、常に動的な刺激を与え続けます。遊戯室の一部などには適していますが、保育室全体に使うと子どもは落ち着きを失います。
マット仕上げ: 光を吸収・拡散し、空間を静かに落ち着かせます。
「本物の素材」が持つ情報の豊かさ
例えば、木目調のプリントシートと、本物の無垢材。色は似ていても、光の反射、手触り、経年変化による深みが違います。
本物の素材には「自然の不規則なリズム(1/f ゆらぎ)」があり、これが子どものストレスを軽減させることがわかっています。
照明設計(ライティング)とのセット提案
色の見え方は「光」で決まります。
設計事務所が提案する色彩計画には、必ず照明の「色温度(電球色〜昼白色)」や「演色性(色の再現度)」の計算が含まれます。
夕方の保育室が温かみのあるオレンジ色の光に包まれる設計にすることで、子どものお迎え待ちの不安を和らげることも可能です。
失敗しないための「配色の黄金比 70:25:5」
園舎内装でおしゃれさと落ち着きを両立させるには、以下の面積比率を守るのが鉄則です。
役割 | 面積比 | 該当箇所 | 選び方のポイント |
ベースカラー | 70% | 壁・天井・床 | 飽きのこない白、アイボリー、明るい木目。空間の「背景」になる色。 |
サブカラー | 25% | 建具(ドア)、家具、カーテン | 園のテーマカラー。ベースと調和しつつ、空間を引き締める色。 |
アクセントカラー | 5% | サイン、扉の取手、一部の遊具 | 鮮やかな色。方向性を示したり、活動のアクセントにする色。 |
なぜ「3色」なのか?
色が4色、5色と増えるごとに、空間の「情報量」は倍増します。
3色に絞ることで、空間に秩序が生まれ、飾られる子どもの作品や、元気に走り回る子ども自身が「主役」として引き立つのです。
園の「想い」を色に翻訳する|失敗しない色の選び方
園舎の色彩計画に、万人に共通する「唯一の正解」はありません。なぜなら、園によって教育理念も、立地条件も、先生方が大切にしたい雰囲気も異なるからです。
私たちは特定のカラーパターンを押し付けるのではなく、先生方の想いを伺いながら、以下の3つの視点で「その園だけの色彩軸」を構築していきます。
① 「木の種類」を軸に据える
内装の大部分を占める木材の種類によって、合わせるべきモノトーンや差し色のトーンが決まります。
オーク(明るく力強い): 自然な明るさを活かし、コントラストを抑えたアースカラー(スプリンググリーン等)が、活発さと優しさを両立させます。
アッシュ(清潔感と透明感): 明るく均一な木目には、クレーマ(クリーム色)などの淡い色を重ねることで、空間をより広く、清らかな印象に仕上げます。
チーク(落ち着きと品格): 重厚感があるため、グレートーンや彩度を抑えた色を合わせることで、モダンで大人びた「本物感」を醸成します。

② 「差し色」は意味を持って配置する
「なんとなく好きな色」で選ぶのではなく、その色が子どもたちに与える「心理的効果」と「機能」を考慮します。
情緒を整える: 落ち着きが必要な保育室には、植物や土を連想させる「スプリンググリーン」や、穏やかな「クレーマ」を。
感性を刺激する: 創作活動を行うアトリエや遊戯室には、少しの「クロッコ(クロッカス)」や「ローザ(ピンク・赤系)」をポイント使いし、心の躍動を促します。
③ サッシや金物による「空間の引き締め」
壁や床の色彩を整えた後、重要になるのがサッシや金物の色です。 例えば、窓サッシに「ブラック」や「ダークグレー」を採用することで、空間全体がぼやけず、きりりと引き締まったモダンな印象を与えます。
これは、額縁が絵画を引き立てるのと同じ効果です。
モノトーンのラインを効果的に使うことで、子ども向けの空間でありながら、「大人が見ても美しい」洗練された園舎が完成します。
園舎設計〔素材・色彩〕に関するQ&A:よくある疑問にお答えします
Q. 汚れが目立たないように、壁の下の方を濃い色にしたいのですが?
A. 実務的には有効ですが、空間を圧迫する場合もあります。
最近では、汚れに強く、かつ明るい色の高機能クロスや、木製の腰壁(マット塗装)をお勧めしています。
明るさを維持しつつ、メンテナンス性を確保することが可能です。
Q. 補助金の兼ね合いで、使える素材に制限はありますか?
A. 自治体によりますが、木造化・内装木質化による補助金加算があるケースも多いです。
設計事務所はこうした補助金申請のアドバイスもセットで行います。
Q. 園長としての「こだわり」が強すぎて、まとまらないのではと不安です。
A. むしろ、こだわりをたくさんお聞かせください。
バラバラに見える「好き」の中から、園のフィロソフィー(哲学)を抽出して一本の色彩軸にまとめるのが、設計事務所の役割です。
設計事務所選びのポイント:色彩計画まで提案があるか?
認定こども園や保育園の設計を依頼する際、図面(間取り)の良し悪しだけで判断していませんか?
本当に優れた設計事務所は、「その壁の色が、3年後の子どもの姿にどう影響するか」までを語れます。
平面図だけでなく、リアルな3Dパースで色彩のシミュレーションを見せてくれるか。
建築基準法や児童福祉施設の設置基準をクリアした上で、プラスアルファの「情緒的価値」を提案できるか。
こうした視点を持つ設計パートナーを選ぶことが、建て替えを成功させる最大の近道です。

園舎の色彩は「目立たせる」ためのものではない
【まとめ】
園舎の色彩は、写真映えや第一印象のためだけにあるものではありません。
子どもが毎日過ごし、成長の時間を積み重ねていく場所だからこそ
・素材
・色
・光
・組み合わせ
を丁寧に整えることが大切です。
園舎の色彩計画、素材選びに「正解」はありません。しかし、考え方の軸はあります。
同じ色であっても、素材や仕上げによって印象は大きく変わります。
空間全体としてどのような見え方になるのかを整理し、子どもにとって心地よい刺激量を整えていくこと。
それが、園舎設計における色彩計画に求められる視点です。


